不動産市場は今、借り手よりも物件の数が多すぎる供給過多といわれ、マイホームの購入が必ずしも正解とはいえないのが現実。
気軽に引っ越しできる賃貸物件に住み続けるのも選択肢のひとつです。そこで今回は賃貸の種類についてお伝えします。
1.賃貸住宅の種類
1-1.賃貸物件にはどんな特徴があるの?
婚活や就活と同じように、理想像がハッキリとしているほど、狙った物件の確立も高まります。
住まい探しを制すには、まず物件の特徴を知ることから。
賃貸物件には、建物の形態が様々なタイプに分かれているので、まずはどんな種類があるのかをおさらいしておきましょう。
賃貸物件の種類は大きく分けて2タイプ。ひとつは集合住宅でもう一つは戸建て住宅です。代表的な集合住宅がマンションです。
たいてい駅周辺に多く建っていますが、駅から徒歩5分以内の立地にはワンルームマンションなどの独身向けのマンションがほとんどです。
ファミリー向けと呼ばれるマンションは駅から少し離れた立地になりがち。専有面積の広さによる家賃上昇を抑えることとも関係があります。
また賃貸マンションには、最初から賃貸物件として建てられたマンションのほかに、「分譲賃貸」と呼ばれるタイプもあります。では2つの違いを比べてみましょう。
●一般的な賃貸マンションのメリット・デメリット
土地のオーナーが、賃貸向けに一棟まるごとマンションを建てたマンション。新築から築年数の古いものまで、賃貸住宅の中でも圧倒的な物件数を誇ります。
デメリットは新築で探そうとすると、ファミリー向けの物件が意外と少ないこと。
ワンルームの方が住戸数を増やせることが関係しています。
また、各住戸の広さやグレードを上げれば上げるほど、総工費がかさんでしまい、家賃を高く設定せざるを得ないといった理由で、構造や間取り、設備などが標準仕様になる傾向にあります。
●分譲賃貸のメリット・デメリット
分譲賃貸とは分譲マンションの区分所有者が、賃貸に出した物件を意味します。
そもそも何千万円以上もの価格で販売するために建てられた物件のため、構造や間取り、設備仕様、防音効果などは一般的な賃貸マンションと比べてハイグレード。
駐車場や駐輪場が設置されているだけでなく、築年数が浅い物件は特にエントランスなどの共有部分が上質感のある造りになっています。
メリットを上げるとお得に思える分譲賃貸ですが、デメリットももちろんあります。
それというのも、区分所有者全員でお金を出し合って維持管理しているため、管理費が高いのが特徴。
その管理費を家賃と分けて設定されている場合は、管理費を管理組合に支払います。さらに一般的な賃貸マンションと比べて管理規約が厳しく定められています。
バルコニーに洗濯物や布団が干せないというルールを設けているマンションも珍しくありません。そうした管理規約は物件案内の際に確認しておくのが得策です。
それにしても、ずいぶんと色んな種類があるのですね!
1-2.リロケーション物件って何?
リロケーション物件とは、家の持ち主が海外赴任や転勤などで一定期間マイホームを使用しない際に、留守宅を貸し出す期間限定の賃貸住宅です。
友人知人など身近な人に貸し出す場合もありますが、多くは不動産会社に委託して賃貸契約を結ぶことがほとんどです。
分譲マンションに限らず一戸建てがリロケーションされることもあり、中には築年数が新しく、ハイグレードな設備なのに周辺相場より家賃設定が安い物件も。
期間限定の契約のため、更新もなく更新料の負担がなくお得です。
1-3.テラスハウスとタウンハウスの違いは?
タウンハウスとテラスハウスは、賃貸マンションと比べて家賃が比較的お手頃。
テラスハウスやタウンハウスとは、いったいどのような住宅なのでしょうか。それぞれの違いとメリット・デメリットをみていきましょう。
テラスハウスとタウンハウスの共通の特徴は、複数の住戸が連続した建物の形状です。昔ながらの長屋といわれる建物や、2戸で1棟を形成している建物も多くあります。
テラスハウスは各戸に独立した庭やテラスが設置され、敷地の権利は一戸建て住宅のように分けられているため、一戸建て住宅に分類されます。
賃貸住宅に多いのはタウンハウス。隣家と敷地を共有していて「一戸建て感覚のアパート」に近いといえます。
どちらも玄関を出たらすぐに道路があるため、一戸建てのような住み心地。ほとんどが2階建てで、マンションのように上下階は気になりにくいですが、お隣とは壁1枚を隔てただけ。遮音性能が低い物件は生活音が響かないよう、注意が必要です。
2.民間住宅と公営、公団の違い
2-1.公的住宅って何?
各地方の住宅供給公社などが、優良な住宅を供給することを目的としているため、設備・広さ・環境はばっちりです。
「家賃が安い割に広い。日当たりが良い」と、
子育て世帯にうれしい住環境が整っているようだとよく耳にします
公的な賃貸には、(1)都道府県営・市区町村営住宅、(2)UR賃貸住宅、(3)公社住宅 の3つの種類があります。これらの違いを比較してみましょう。
UR賃貸(公団住宅) | 公営住宅 | 公社住宅(コーシャハイツ) | |
---|---|---|---|
運営組織 | 独立行政法人都市再生機構 (UR都市機構) |
各都道府県 ・市町村等 |
各地方の住宅供給公社 |
礼金 仲介手数料 更新料 |
必要無し | 必要無し | 必要無し |
敷金 | 必要 | 必要 | 必要 |
保証人 | 不要 | 必要 | 必要 |
申込方法 | 先着順 | 抽選 | 先着順 |
収入条件 | 一定基準以上必要 | 一定基準以下の収入 (低所得者層向けの為) |
一定基準以上必要 |
公的な住宅は、民間が運営している賃貸住宅と比べて家賃はぐっと控えめ。これには理由があるのです。
そもそも公営住宅の役割は、「収入が相対的に低く、自力では居住水準の向上が困難な世帯のための住宅」とされ、持ち家がなく「住宅に困窮する世帯」が公営住宅の入居者対象になっています。
収入基準が設けられていて、一定の所得以下でなければ入居できません。そして、収入に応じて家賃が決まる仕組みとなっています。
たとえば大阪市の公営住宅の家賃算定基準は、月収によって8つの区分に分けられています。
収入区分 | 政令月収 | 家賃算定基礎額 |
---|---|---|
区分1 | 104,000円以下 | 34,400円 |
区分2 | 123,000円以下 | 39,700円 |
区分3 | 139,000円以下 | 45,400円 |
区分4 | 158,000円以下 | 51,200円 |
区分5 | 186,000円以下 | 58,500円 |
区分6 | 214,000円以下 | 67,500円 |
区分7 | 259,000円以下 | 79,000円 |
区分8 | 259,000円超過 | 91,100円 |
収入・同居親族・居住地といった申し込み資格に当てはまる人だけが応募でき、抽選によって入居できるかどうかが決まります。
共働きの場合は、月収が基準額を超えてしまうという場合でも、公社住宅やUR賃貸住宅ならば応募可能です。
一定以上の収入があれば、収入基準に上限はなく、競争率も高くないため狙い目です。
2-2.公社住宅とUR賃貸との違いは?
公社住宅のほとんどが、地方住宅供給公社で管理・運営しています。各地の住宅供給公社により賃貸住宅の種類が細かく分類されています。
一定所得以上の子育て世帯が住む住宅は、主に「特定優良賃貸住宅」「特定公共賃貸住宅」「UR賃貸住宅」の3タイプに分けられます。
当然のことながら、それぞれの家賃は住宅の規模と立地状況に応じて異なります。
一般的な賃貸住宅と違って礼金・更新料・仲介手数料が不要なところが大きなメリット。公社住宅は、運営母体の違いや取り扱う物件によって3つのタイプに分かれます。
●特定優良賃貸住宅
地方公共団体が建設費や家賃の一部の支援を行っている、民間賃貸住宅です。収入に応じて家賃補助が受けられる物件も扱っているのが特徴です。
各地の住宅供給公社が所有している物件のほか、民間の大家さんから借上げて管理のみを行っている物件もあります。
そんな特定優良賃貸住宅は、中堅所得者世帯向けの仕組みなので、原則として一定の収入基準の範囲内でないと申し込みすることができません。
目安は、4人世帯年収約510~690万円程度です。
●特定公共賃貸住宅
特定優良賃貸住宅の条件とほぼ同じ、中堅所得者世帯向けの賃貸住宅です。地方公共団体が直接建設を行い、賃貸しています。
一部の地方公共住宅公社は地方公共団体から管理受託している物件も取り扱っています。
建物の構造や住戸の床面積、広さ、戸数などの条件が定められているため、同時期に建設された一般のマンションよりも、グレードが高まることがあります。
収入基準の目安は、4人世帯年収約400~900万円程度です。
●UR賃貸住宅
都市再生機構が運営している住宅です。同居家族などの条件のほかに申込本人の所得の下限が決まっています。基準月収額は家賃の4倍、または33万円。
新築や築年数の浅い物件は、最新のマンションと同じくハイグレードな物件が多数あります。その分、家賃もお高めです。
物件によっては敷金を分割できる、フリーレント付きや子育て割引などサポート内容が充実しており、空き住宅があれば、抽選なしで申込みできることも特徴です。
2-3.初期費用と更新料を節約するなら公的住宅!
この他、公的住宅にはDIYでリノベーションが可能な物件やフルリノベーション済の物件など、現代人の住まいのニーズに合わせた物件も取り扱っています。
そんな公営住宅やUR賃貸住宅は、初期費用が抑えられることが何よりもの魅力。更新料も請求されないので、長く住みたい人にとってぴったりといえるでしょう。建物は筋コンクリートや鉄骨鉄筋コンクリートで造られているので、遮音性も高いのがメリット。住みたい地域に公的な住宅がある場合は、候補のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。
3.最後に
「どこも微妙で決められない」というときには、
どうしても受け入れられないデメリットを条件にしてみてはいかがでしょうか。
住み慣れた地域ならともかく、新しい土地で理想の住まいを探すのは至難の業。駅から近く、買い物施設も充実していて、幼稚園や小学校も近い。
そんな便利で快適性の高い地域ほど、家賃は高くなってしまいます。
間取りや日当たり、ペットも楽器演奏もOKなどと条件を連ねると、夢は膨らむばかりで現実には程遠くなってしまいます。
「どこも微妙で決められない」というときには、どうしても受け入れられないデメリットを条件にしてみてはいかがでしょうか。
最近はインターネットで情報収集してから不動産会社に行く人が多いですが、引越し予定の地域に実際に足を運んでみることも大切です。
あの手、この手で情報を駆使して、理想の住まいを見つけましょう。