子育てをしながら働くのは大変。「正社員なんて無理!」と最初から決めてつけていませんか?私はずっとそんな固定概念がありました。
なんてもったいない!と思います。まずは「知る」ことから始めましょう。
この記事では「正社員と非正規社員」という観点から、子育てママの働き方について考察します。

1.子育て世代のママの就業状況



あなた自身、もしくはあなたのまわりの子育てをしているママは、仕事をしていますか?しているとしたら、どういう雇用形態なのでしょうか?
厚生労働省が毎年行っている「国民生活基礎調査」の中に「児童がいる世帯の母親の就業状況」という項目があります。平成23年から平成27年の調査結果は下記の表のとおりです。

正規 非正規 仕事なし
H23 17.5 33.1 11.6 37.7
H25 19.4 34.6 9.0 36.9
H27 22.4 37.2 8.4 31.9

全体として「仕事なし」つまり専業主婦の割合は少しずつ減っており、子どもがいても何らかの方法で仕事をしているママが増えていることがわかります。しかし多くを占めているのが非正規雇用であり、正規社員の割合は20%前後と低くなっています。

働いてはいるが、非正規社員が多いというのは今の日本の特徴なんですね。

2.正社員と非正規社員の違い



2-1.「正社員」「非正規社員」の定義


「正社員」とは一般的に、「ある企業に期限の定めがなく雇用されている労働者」のことを指します。基本的にフルタイムでの勤務であり、異動などの指示があればそれに従わなくてはなりません。


また、正社員の特徴として
・終身雇用(基本的に退職までずっと雇用され続ける)
・年功序列(勤続年数に応じて昇給が行われる)が挙げられます。


長引く不況の影響や社会情勢の変化などにより、これらは少しずつ崩壊しつつあるとはいえ、正社員=安定していて給与も多い、と考えている人はまだ多く存在します。


一方、「非正規社員」とは一般的に「正社員ではない形で雇用されている労働者」のことを指します。具体的には
・パート
・アルバイト
・契約社員
・派遣社員などが「非正規社員」と呼ばれます。


2-2.雇用期間


正社員と非正規社員の大きな違いとして挙げられるのは「雇用期間が定められているか否か」です。正社員は基本的に長期雇用を前提とした直接の雇用契約関係ですが、非正規社員はほとんどが数ヶ月~数年の有期雇用の契約です。


2-3.労働時間


正社員はフルタイムでの勤務が基本ですが、非正規社員、とくにパートやアルバイトは「1日数時間」など、短時間での勤務が多いのも特徴です。

お金よりも時間が優先順位である場合は、時間に融通がきく非正規社員がいいというわけですね。

2-4.賃金の違い


短時間労働の場合はもちろん、正社員と同じだけ働いていても(同じ仕事をしても)、非正規雇用の場合は受け取る賃金が正社員に比べて少ないことが多いようです。
また、正社員の場合、勤続年数に応じて昇給する制度があることが多いのですが、非正規社員の場合は長期間雇用されていてもずっと同じ給与、という場合が多いです。

また、正社員なら多くが受け取れるはずの賞与・退職金も、非正規社員には制度が適用されない、ということもあります。
(現在、政府が「同一労働同一賃金」を目指していますが、実際にはまだまだ遠い道のりです・・トホホ)


3.働くなら正社員?非正規雇用?子育てママの気になるところ


3-1.有給休暇


幼い子どもを育てながら働く場合、子どもの体調不良などでやむを得ず仕事を休んでしまうということはよくあります。そんな時、単に「休みます」と言ってその分お給料が減っている、という人は多いのではないでしょうか。

有給休暇=正社員が取得できるもの、と思っているのなら、それは間違いです。

・就労して6ヶ月以上経っている
・全労働日の8割以上に出勤している

という条件を満たせば、正社員だけではなくパートやアルバイトなどの非正規社員でも有給休暇を取得することができるのです。取得できる日数は労働時間や労働日数などに応じて決まります。


「パートで何年も勤めているけど、有休なんて聞いたことがない」という場合、自分の就労状況を一度調べてみるといいかもしれませんね。

3-2.育児休業


「2人目を妊娠したけど、非正規だから育児休業は取れない。なので仕事を辞めた」というのはよく聞く話ですが、「非正規だから育休が取れない」などということはありません。これも有給と同じく雇用期間などの条件を満たしていれば、正社員・非正規雇用関係なく育休を取得することができます


2016年までは

・1年以上継続して雇用されている
・子が1歳以降も雇用が見込まれる
・子が2歳になるまで更新の可能性がある
という3つの条件を満たす必要がありましたが、

2017年より法律が改正され

・1年以上継続して雇用されている
・子が1歳6ヶ月になるまで更新の可能性がある


というように、有期雇用の女性でも育児休業が取得しやすいよう条件が緩和されました。ちなみに、この条件を満たしていない場合(雇用されている期間が1年未満である、など)は正社員でも育児休業は取得できませんので、注意が必要です。


3-3.社保や年金


会社に勤める正社員であれば、基本的に全員社会保険に加入することになっている一方、非正規社員でも条件さえ満たしていれば社会保険に加入することは可能です。しかしこれも非正規社員の育児休業同様、あまり知られていない事実です。

ママ子

非正規社員の女性が増えていることもあり、色んな制度が使えるようになっています。しかし、このような大切なことを会社の上司などが知らないこともあるのです!ですから自分自身できちんと知識を身に着けておきましょう



2016年9月までは
・所定労働時間が正社員4分の3以上であること(通常30時間以上)
ということが条件でした。


しかし、2016年10月からは条件が緩和され、

・週の所定労働時間が20時間以上であること
・雇用期間が1年以上見込まれること
・賃金の月額が8.8万円以上であること
・学生ではないこと


これらの条件を満たし、特定適用事業所(被保険者の合計が1年6ヶ月以上、500人を超える事業所)で勤務している場合、社会保険の適用対象となります。


3-4.非正規でも活用できる制度は多い


有給休暇や育児休業、社会保険など、一般的に「正社員のための制度」というイメージのある各種制度ですが、実はどれも「正社員であること」という条件はありません。


それぞれの制度の条件を満たしてさえいれば、非正規雇用でも利用できる制度は多いのです。今後さらに非正規雇用でも働きやすい環境づくりが進む可能性は十分にあるでしょう。


4.非正規雇用に関係するさまざまな制度・考え方


4-1.「無期雇用」への切り替え


同じ職場で長く勤務している非正規雇用の人もいますが、それはあくまでも「有期雇用契約」を繰り返しているという形であるため、どんなに長く働いていても次の更新時に「契約は更新しない」と言われる可能性が常にあります。

そのような不利益を防ぐため、2013年に労働契約法が改正され、「有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた場合、労働者の申込により、無期労働契約に転換できる」ことになりました。


「次は更新してもらえるかな…」という不安を抱えながら就業しなくてよくなりますので、非正規雇用で働いている人にはとても嬉しい制度です。



ただ、

・「無期労働契約=正社員ではない」ということ(昇給や退職金などがないまま長期間働くことになる可能性がある)
・企業によっては「通算5年」に達する前に契約終了となる可能性があること

などには注意が必要です。


4-2.パートタイマーの地位向上


2015年に「パートタイム労働法」が改正されました。大きなポイントとしては下記の3点です。


・パートタイム労働者の公正な待遇の確保
従来から無期労働契約のパートタイマーについては正社員との差別的取り扱いが禁止されていましたが、この改正では有期契約のパートタイマーにも適用が拡大されました。


・パートタイム労働者の納得性を高めるための措置
パートタイマーを新たに雇ったり契約更新をしたりした雇用主は、賃金制度や正社員転換制度などについてわかりやすく説明する義務を負うことになりました。また、パートタイマーからの相談などに応じる窓口を設け、文書を交付してそれについて知らせる義務も負うことになりました。


・パートタイム労働法の実効性を高めるための規定の新設
厚生労働大臣からの勧告に従わない事業主の名前を公表したり、過料を処したりすることができるようになりました。


4-3.「同一労働同一賃金」という考え方


「同一労働同一賃金」とは「同一の仕事に就く労働者にはみんな同じ水準の賃金が支払われるべきである」という考え方です。
欧州などと比較して、日本では正社員と非正規社員との間の賃金格差が大きいと言われています。この問題に対処するため、政府は2016年12月に「同一労働同一賃金」のガイドラインをまとめました。

賃金はいろいろな要素を組み合わせて決定されるため、なにもかも一概に「同一の仕事に就く労働者にはみんな同じ水準の賃金が支払われるべき」と断言するのは難しいものです。


政府のガイドライン「こういう場合は問題になる」「こちらの場合は問題にならない」などというように、さまざまな場面を想定したものとなっています。


5.「自分らしく働く」という選択


5-1.「正社員」「非正規社員」という枠組みはもう古い?


「正社員と非正規社員の格差是正を」という声が聞こえる昨今ですが、法律の改正や政府のガイドラインの制定など、対策は少しずつですが進んでいます。「正社員」と「非正規社員」という分け方事態が時代遅れになる日が来るかもしれません。


5-2.第三の選択肢「フリーランス」


ここまで「正社員」と「非正規社員」の話をしてきましたが、それ以外にも選択肢はあります。どこかの会社に雇用されるのではなく自分自身で仕事を進めていく「フリーランス」、つまり自営業です。


自営業、というとハードルが高く感じるかもしれませんが、最近ではインターネットの普及により、パソコンとネット環境さえあれば仕事が受注できる仕組みも整いつつあります。
最近話題の「クラウドソーシング」などは「フリーランス」への第一歩を踏み出すのに最適なシステムです。
「どこかの会社に雇用され、そこから給与をもらう」という概念から一度離れてみるのもいいかもしれません。


5-3.多様な働き方が許容される社会へ


「正社員」「非正規社員」「フリーランス」「専業主婦」など、子育てママに限らず、この社会にはいろいろな働き方が存在します。それぞれにメリットやデメリットがあり、子どもの有無や子どもの年齢、パートナーとの関係などで、自分に合った働き方は変わります。


たとえば、「専門職でバリバリ働いている姿を子どもに見せたい」などという考えがあるのなら、「正社員として一生懸命働くこと」がその人の考えに合った働き方ですし、「仕事よりも子どもとの時間を優先したい」と思うのであれば、子どもがいない時間だけ働くことができる「非正規(パート)」がその人に合った働き方である、と考えることができます。

働き方に正解はありません。仕事のやりがい、経済的余裕、子どもとの時間…「大切にしたいもの」は人それぞれです。
自分が何を大切にしたいのかをきちんと見きわめ、
自分に合った働き方とはどういう働き方なのか、一度じっくり考えてみてくださいね。