真っ赤なお顔がチャームポイントのオニガワラ・ケンさんは、地獄で勤める赤鬼のサラリーマンです。
朝起きたらスーツをビシっと決めて、優しい奥さんと子供達に見送られながら今日も元気に出勤です。


地獄の正門前行きのバスの停留所で、なじみの青鬼、黄鬼、緑鬼と世間話を交わして、妖怪たちでつめつめの満員バスに揺られます。誰かのツノが当たってチクチク、まったくかないません。


えんま大王様に朝のあいさつを済ませると、さあいよいよお仕事です。ケンさんの今日の担当は、血の池地獄の見張りです。
釜茹で地獄の火の番のオニジマヒロシさんが、「えぇなぁ、楽チンやんか～」と羨ましそうにしています。


ロッカールームで赤鬼スタイルにばっちりきめて持ち場に向かうと、真っ赤な血の池に亡者がウヨウヨ、プーカプカ。「おい、そこケンカしたらあかんぞ！」、「浮き袋は禁止や！」、　「誰や、ゴムボートを持って来たやつは！！」とケンさんの怒号が飛び交います。


やれやれやっと休憩や～と愛妻弁当をいただくと、満腹になったケンさん、寝不足も手伝ってグーグー、スースー、コクリコクリ…ハっと目を覚ました時には、これぞまさしく地獄絵図。
極楽の方からぶら下がった一本の蜘蛛の糸に、亡者達がわれ先にと掴まって上ろうとしています。騒ぎを聞きつけた他の鬼達が池を包囲し、極楽なんか行っても暇なだけやぞと必死の説得。そして糸がついにプツン！と切れて…めでたしめでたしとは行かず、ケンさんを待っていたのはえんま大王様のお説教。

ストレスで心もツノも折れそうです。こんな日は一杯飲みに行くに限る！！人間も鬼も、働くって大変なんですねぇ。

昔話に出てくるような悪い鬼もいれば、家族のためにせっせと働くこんな鬼もいるんです。えんま帳をよく見ると、ケンさんの居眠りはこれで四回目。次はボーナスカット間違いなしですね…がんばれおとーちゃん。


表紙見開き部分にある絵本紹介ページは、ケンさんの子供が担当しています。帰ってきたら肩をもんであげようかな、なんて泣かせるじゃありませんか。
やまんばあさんシリーズや妖怪一家九十九さんシリーズでおなじみの富安陽子さんと、『いがぐり星人グリたろう』や『ブチョロビッチョロはどこ？』の大島妙子さんがタッグを組んだ楽しい絵本。

続編で『オニのサラリーマン　しゅっちょうはつらいよ』も出ています。ケンさんの働きっぷり、とくとご覧あれ！！
以上、子ども館酒井でした。

この絵本のプレゼントはこちらからお申込みくださいね。