『おしゃべりなたまごやき』
寺村輝夫 作 / 長新太 画 / 福音館書店

テレレッテ トロロット プルルップ タアー
ある国の、ある王様の、ある日のお話です。

王様は毎朝、朝ごはんを食べると『あいさつの部屋』へ出かけることになっています。大臣のあいさつに始まり、お城の兵隊の隊長、勉強の先生、お医者さん、歯医者さんに床屋さん、植木屋さんにお掃除のおばさん…みんなが順番にあいさつをしていくのを「あ、うん」と、ただ聞いているのです。

いちばん最後はコックさん。今日食べたい献立を聞かれて初めて、王様は目玉焼きが食べたいと「あ、うん」以外の事を言いました。


朝の勉強が終わるとようやく王様の休み時間。大きなあくびをしてから庭をとっとっと一回り。遊ぶのがいちばん好きなのです。するとそこにはニワトリ小屋がありました。中では無数のニワトリたちがぎゅうぎゅう詰めになっていて苦しそう。
これでは自由に遊ぶこともできません。


かわいそうになった王様が、さしっぱなしになっていた鍵をガチャリと回したとたん、ニワトリ達が戸を弾くように一斉に飛び出してしまいました。こうなってはもう誰にも止められません。


たいへんな騒ぎになってしまったと慌てた王様は、急いで手に持っていたニワトリ小屋の鍵を窓から捨て、そばにいた一羽のニワトリに言い聞かせます。「僕が小屋を開けたのを誰にも言うなよ、黙っていろ」


そんな事とは露知らず、お城では犯人探しで大騒ぎ。鍵をしまい忘れた自分のせいですとコックさんは謝っています。そんな様子を見て王様は心の中でおかしくてたまりません。
それなのに「鍵を開けた犯人を牢屋に入れてしまえ」だなんて、ほんと困ったものですよね。そんな中、真犯人を知らせる何かが現れます。それはまさかの…


この絵本に初めて私が出会ったのは小学生の時。この王様を見ていると王様のくせに自分と同世代、むしろ自分よりも小さい子みたいと思っていました。
自分が犯人なのに白状せず、陰でほくそ笑んでいるなんて、どれだけずるい人なんだ…と。


でも嫌いにまでならなかったのは、もとはと言えば王様はぎゅうぎゅうに閉じ込められているニワトリたちを助けようとしたからだと分かっていたからだと思います。そう、この物語には根っからの悪人は一人も出てこないのです。


王様の要望通りに食事を提供できず自分を責めたコックさんも、怒ってニワトリをやっつけてしまうことだってできますし、王様だって嘘が分かってしまったコックさんを王様の権限でクビにだってできるのです。


何年も経って自分が大人になって見返してみると、お互いに咎めることなく恥ずかしいながらも許しあって、みんななんて人間らしくて可愛いのだろうと、読む年齢によって感じ方が変わってくるなんて、改めて絵本の奥深さを感じた今日この頃です。以上、子ども館酒井でした。

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定期イベントは、今後の予定が決まっておりませんので、HP・ツイッターにて随時お知らせしていく予定です。



ママ子

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