1.出産後に仕事を辞める女性は多い



「一億総活躍社会」なんていう言葉ができて、以前より女性が働きやすくなった印象がありますね。
とはいえ、出産後に仕事を辞めるママはまだまだ多いもの。


内閣府の調査では、出産前に仕事をしていた女性の46.9%が、出産を機に退職しています。

出典:内閣府「第1子出産前後の女性の継続就業率」の動向関連データ集 平成28年

退職の理由は「育児に専念したかった」「預け先(保育所など)が確保できなかった」「職場の制度が不十分だった」などさまざま。


どんな理由にせよ、仕事をやめて専業主婦になってしまうと、「もう一度仕事探しから始めて再就職するのは、ハードルが高く感じられて、なかなか行動に移せない」という声もよく聞かれます。


それでもファイナンシャルプランナーとして、100名を超える女性から相談を受けてきた経験から、声を大にして言いたいのです。


「ぜひ、また働き始めてほしい!」
「できることなら扶養の範囲内のしごとではなく、キャリアを積み重ねてほしい!」
と。

2.お金のプロが「再就職」を勧める理由



私は、44歳で2人の子どもをかかえて離婚に直面、お金の不安からファイナンシャルプランナー資格を取得し、独立開業しました。
その経歴のせいか、私のお客さまは、ほぼ100%が子育て中のママたち。


しかも、「まさか自分の人生にこんなことが起こるなんて…」という『人生のピンチ』に遭遇し、お金の心配や不安を抱えてご相談に来られる方がほとんどなのです。


ご相談の現場では、相談者さまの働き方と収入によって、未来予想図は大きく変わります。
そのママが全く収入のない専業主婦なのか、扶養の範囲内で働くパートなのか、経済的に自立できるくらい収入があるフルタイム勤務なのか…


やはり、しっかりとしたキャリアと収入のあるママの方が、人生の選択肢が多いのが現実。
ピンチを何とか切り抜けたり、人生を立て直したりできる可能性が高いのです。


「ぜひ働き続けてほしい」と私が切に願う理由はここにあります。
「人生のピンチってどんなとき?」
「本当に私に起こるかな?」


あまりピンと来ていないママも、読み進めてくださいね。

3.「働いていて良かった!」と実感させられる『人生のピンチ』3選



夫や子どものため、子育てに主婦業に忙しいママたち。
どんなに完璧なママであっても、理不尽な「人生のピンチ」は誰にでも訪れる可能性があります。


それは「夫という収入の柱が揺らぐとき」
毎月のお給料が入ってくるのは当然だと思っていた、そんな自分の中の常識が脆くも崩れ去ってしまいます。


以下に、代表的な3つのケースをご紹介します。

3-1.夫の失業・減俸

ここ数年景気が回復してきているとはいえ、サラリーマンの平均給与は横ばいが続いています。
あなたのご家庭だけではありませんよ!

出典:国税庁「民間給与実態統計調査結果」平成26年



ご家庭によっては、会社都合や病気などで、夫が失業したり、お給料が激減したりしてしまうケースも。子どもがちょうど高校~大学生で、教育費の負担が大きい時期に重なると、進学をあきらめないといけない事態にもなりかねません。


そんな時、ママが働いていることが大きな助けに。家計に収入の柱はたくさんあった方が安心です。

3-2.離婚

結婚するとき、自分が離婚するかもと思ってする人は一人もいません。自分たち夫婦に限って…と誰もが驚き、挫折感に苦しむのが離婚です。


モラハラ、借金、不貞、DVなど、原因は様々ですが、必ずと言っていいほど女性について回るのが「お金の不安」


自分の収入でやっていけるのか? 子どもの教育費は払えるのか? 住む場所は?老後はどうなる?など、複数の悩みが絡み合っていることも珍しくありません。


どうしても離婚後の生活が難しい場合は、すぐに離婚せず、まずは経済的に自立を目指しましょうとアドバイスします。


離婚を推奨するわけではありませんが、どうしても辛い結婚生活を、お金の問題で続けざるをえないという苦しい状況を見ると、収入があるということは、選択肢が広がるということ、人生の自由が増えるということなんだなぁと、実感させられます。

3-3.死別

シングルマザーになる理由が、離婚ではなく死別という方もいらっしゃいます。
また、子どもが独立した後に夫と死別し、おひとりさまになる方もいらっしゃいます。


死別の場合、遺族年金や生命保険などで十分な資産があるというイメージですが、世帯全体の収入が減って、家計が苦しくなるケースもたくさんあります。


また何より、パートナーとの別れから立ち直って、一からキャリアをスタートするには、かなりの時間と精神力が必要になります。

3-4. 他にもある「働いていて良かった!」

ご紹介した3つのケースは、人生のピンチの代表例でしたが、他にもママが働いていたことで「助かった!」というケースはたくさんあります。


子どもが思いがけず私立の学校に入学した、留学を希望した、親の介護にお金がかかった、など。ママのお給料には手をつけず、そっくり住宅ローンの繰り上げ返済に回して、35年ローンをわずか14年で返済したご家庭もありました。


4.ゼロからキャリアを作り上げた2人のママのケース



「ママにも収入が必要なのは分かった、でも、専業主婦から再就職、しかも経済的に自立できるほどの収入を得るなんてとてもムリ!」そう感じられる方もいるかもしれません。


特に「独身時代に仕事の経験があまりない」というママにとっては、何から始めたらいいのか見当もつかない…という状態だと思います。


そこで、「私にもできるかも!」と思わせてくれる、ご相談者さまのケースを2つ、ご紹介します。

4-1.コーヒーチェーン店員からバイリンガルの貿易会社社員へ

Aさんは大学時代の同級生と卒業と同時に結婚、すぐに専業主婦になったので、独身時代のキャリアはゼロでした。
結婚当初から仕事が多忙な夫とすれ違いの日々が続き、なんとなく「いつか自分1人でやっていかないといけないかも」と感じていたそうです。


子どもが幼稚園に入るとすぐに、コーヒーチェーンで働き始め、その後、パソコン資格を取得しパート事務員として転職、さらには事務職から営業補助へとスキルアップしました。ところが、41歳のとき、職場の会社都合で退職を余儀なくされてしまいます。

「失業保険をもらいながら、ずっとやりたかった英語を勉強しよう」と決心したAさんは、英語の猛勉強をスタート。
とはいえ、お金はかけられないし、家事と子育てもあり、英会話スクールに通う訳にはいきません。


料理や皿洗いをしながら無料のポッドキャストやニュースを聞き、月5,000円しゃべり放題のオンライン英会話で毎日3時間英会話、他にも文法や問題集を勉強して、1日10時間英語漬けの毎日を送りました。


そのおかげで、生まれて初めて受験したTOEICで、990点中865点という高得点をとることができたのです。


1年後、晴れて貿易会社の派遣社員として就職が決まったAさん。900円だった時給は1,450円に大幅アップし、20万円以上の月収になりました。
同じ時期、夫とは離婚が成立。現在は、さらなるキャリアアップと自分の老後資金の準備を目指して、正社員への転換にチャレンジ中です。

4-2.夫の事業失敗で奮起!専業主婦から看護師へ

大学卒業後、保険会社に就職したBさんは同僚と結婚、出産を機に専業主婦になりました。
その後、夫は家業を継いで自営業になったのですが、子どもが1歳と3歳の手のかかる時期に、事業に失敗。


夫婦で独身時代に貯めた貯金もほとんど底をついてしまいます。


「夫に頼るだけでは大変なことになる!」と奮起したBさんは、子ども達を保育園に預け、35歳で看護学校に入学。
2年間でまず准看護師資格を、さらに昼間働きながら3年間かけて正看護師資格を取得、みごと総合病院に就職を果たします。


その後、順調に経験を積み、現在は総合病院でリーダーを任されるまでに。


昨年、夫の収入はあてにせず自分1人の名義でローンを組み、長年の夢だった3階建ての新築一戸建てを購入しました。
中学生の2人の娘も、「ママの仕事はかっこいい!」と言い、将来、医療関係の仕事につくことを希望しているそうです。

5.お金だけじゃない、ママが働くメリット



先ほどご紹介したお2人が、口をそろえておっしゃるのは、

ママだから、お金も時間もすべて自分の自由にならず、そのせいで苦しいこともたくさんあった。でも、そんな状況だからこそ、若い頃とは集中力も必死さも違った!20代独身じゃない、今だからこそ、できたことだと思う



そして、

自分の力でキャリアアップし、収入を得て夢を叶えられたことは、大きな自信になった



ということです。


最初から、ものすごい高収入の仕事や、フルタイム勤務を目指さなくても大丈夫。
少しずつできる仕事から始めることで、経験と自信が積みあがっていきますし、子どもの手が離れてくると、長く働くことも可能になります。ママの収入が増えると、家計も変わりますよ。


また、再就職はできるだけ早めが「吉」です。
つい先延ばしにしてしまいがちですが、人生も後半戦、50代に入ってまとまった収入がなく、夫の失業や離婚といったピンチに見舞われると、打つ手なくホンモノの苦境におちいることに。その時に後悔しても遅いのです。


自信をもって夢を叶えるためにも、将来のピンチに備えるためにも、勇気をもって再就職への第一歩を踏み出してみませんか?